嫌なことがあったあと、仕事中も家に帰ってからも、何度も思い出してしまうことがあります。
寝る前には「あのとき、こうすればよかった」「どうしてあんなことを言われたんだろう」と、同じ出来事を繰り返し考えてしまう。
人には「気分転換でもした方がいいよ」と言えるのに、自分のことになると簡単には切り替えられません。
特に、問題そのものが解決していなければ、嫌な気持ちが残るのも無理はないと思います。
この記事では、心理療法の一つであるACTの考え方をもとに、嫌なことを引きずってしまう理由と対処法を紹介します。
嫌な気持ちを無理に消そうとしなくていい
以前、親が交通事故に遭い、事故相手との連絡や対応を私が行ったことがあります。
相手との電話のやり取りが苦痛で、事故が解決するまでは連絡を取り続けなければなりませんでした。
電話をしていないときも、「また嫌な思いをするんじゃないか」と考えてしまい、何日も気持ちが晴れませんでした。
嫌なことを引きずってしまう背景には、問題が解決していないことや、過去の経験から同じことが起きると予想してしまうことがあります。
また、「どうしてあんなことが起きたんだろう」と原因を考え続け、同じ出来事を何度も思い出してしまうこともあります。
考えないように意識することで、かえってその考えが浮かびやすくなる場合があることも、心理学の研究で指摘されています。
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、アクセプタンス(受容)という考え方を重視しています。
これは、不安や怒りなどの不快な感情を無理に消そうとせず、その感情があることを認めるというものです。
例えば、「また嫌な電話が来るかもしれない」と不安になったとき、「今は不安を感じているんだな」と認めてみる。
不安がすぐに消えるわけではありませんが、無理に気持ちを切り替えようとしなくてもいいのです。
同じことを考え続けてしまうときは、考えと距離を取る
婚活をしていた頃、何度もお断りされる経験をしました。
そのうち、相手からの連絡が少し遅くなるだけで、「今回も断られるんじゃないか」と考えるようになっていました。
ACTには、脱フュージョン(認知的脱フュージョン)という方法があります。
頭に浮かんだ考えを事実そのものとして受け取らず、一つの考えとして捉える方法です。
例えば、「今回も断られるに違いない」という考えが浮かんだら、「今、自分は『今回も断られる』と考えているんだな」と言い換えてみます。
考えを否定したり、無理に前向きな言葉へ置き換えたりする必要はありません。
実際に起きていることと、自分が予想していることを区別してみる。
当時はこうした方法を知りませんでしたが、今振り返ると、過去の経験から悪い結果を予想しすぎていた部分もあったと感じます。
嫌な気持ちがあっても、自分の行動は選べる
親の交通事故では、相手とのやり取りに嫌な思いをしながらも、早く解決したいという気持ちがありました。
最終的には、こちらも譲れるところは譲り、金額面でも折り合いをつけて解決しました。
振り返れば、ほかにも方法はあったかもしれません。それでも、自分で納得して決めたことなので後悔はありません。
婚活では、何度も断られる経験をしたあと、結婚相談所をやめてマッチングアプリに切り替えました。その結果、約1週間で交際につながりました。
どちらも、不安や嫌な気持ちを抱えながら、自分なりに判断して行動した経験です。
ACTでは、不安や怒りが残っていても、自分が望む方向へ行動することを重視しています。
当時はACTを意識していませんでしたが、今振り返ると、この考え方に通じる部分があったように思います。
嫌な気持ちを受け入れることは、理不尽な状況を我慢することではありません。
気持ちが切り替わるのを待つだけでなく、自分が納得できる選択をしていきたいと思っています。
参考文献・参考資料
① Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G.(2012).
Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change(第2版). Guilford Press.
② Association for Contextual Behavioral Science(ACBS).
About ACT.
③ Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L.(1987).
Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.


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