訪問看護ステーション開業に自己資金はいくら必要?入金までの運転資金を考える

訪問看護ステーションの開業資金と運転資金を考える看護師のイメージ 看護師の働き方・お金
訪問看護ステーションの開業では、初期費用だけでなく入金までの運転資金を考えておくことが大切です。


訪問看護ステーションを開業するとき、気になるのが「自己資金はいくら必要なのか」という問題です。

事務所の準備や車両の購入、電子カルテの導入など、開業にはさまざまな費用がかかります。

しかし、開業資金を考えるうえで特に重要なのが、開業後の運転資金です。

訪問看護は、利用者さんにサービスを提供しても、すぐに保険請求分の売上が入金されるわけではありません。

スタッフの給与や社会保険料、通信費などは、売上の入金を待たずに支払う必要があります。

そのため、開業時の初期費用だけでなく、入金が安定するまでの資金も準備しておかなければなりません。

現在、精神科訪問看護ステーションの開業を目指して準備を進める中でも、この資金繰りは重要な課題だと感じています。

この記事では、訪問看護ステーションの開業に必要な自己資金と、最初の入金までに準備しておきたい運転資金について、具体的な金額を交えながら解説します。

訪問看護ステーションを開業するときは、運転資金だけでなく、毎月どのくらいの固定費がかかるのかを把握しておくことも大切です。人件費や車両費、通信費など、開業後にかかる費用を具体的に知りたい方は、「訪問看護ステーションの開業後、毎月いくらかかる?固定費をリアルに計算してみた」が参考になります。

※指定申請時の必要書類や雇用関係の取り扱いは、自治体・地方厚生(支)局等への申請内容によって確認が必要です。実際に開業する際は、管轄する行政機関や専門家へ最新情報を確認してください。


訪問看護ステーションは利用者が来てもすぐにお金が入らない

まず理解しておきたいのが、訪問看護の入金サイクルです。たとえば、9月に利用者さんのところへ訪問したとします。

9月に訪問した分をまとめて、原則として翌月10月10日までに請求します。そして審査などを経て、さらにその翌月に支払いが行われます。

では、実際に9月から訪問を開始した場合、売上がいつ入金されるのかを具体的に見てみましょう。

時期 訪問看護の流れ お金の動き
9月 利用者さんへ訪問看護を提供 売上は発生するが、まだ入金されない
10月 9月分を請求 保険請求分はまだ入金前
11月 9月提供分の支払い 保険請求分が入金される
ポイント
9月に訪問して売上が発生しても、その月に保険請求分が入金されるわけではありません。 「サービス提供 → 翌月請求 → その翌月入金」と時間差があるため、 開業直後は給与や固定費を支払うための運転資金を準備しておくことが重要です。

「3か月分まるまる待たなければならない」という意味ではありませんが、サービス提供月・請求月・入金月と、3つの月をまたぐことになります。

訪問看護療養費については、各月分を翌月10日までに請求することが定められています。

また、国保連を介したオンライン請求については、原則として請求月の翌月20日までに支払う仕組みが示されています。


開業直後は「売上があるのに現金がない」が起こり得る

たとえば開業初月に利用者さんが集まり、100万円の売上が発生したとします。

帳簿上では100万円の売上です。

しかし、その100万円すべてがその月に入ってくるわけではありません。一方で、会社から出ていくお金は待ってくれません。

実際にどのような費用が発生するのか、主なものを整理してみます。

主な費用 内容
スタッフの給与 看護師・准看護師・非常勤スタッフなどの人件費
社会保険料 健康保険・厚生年金などの会社負担分
車両費 訪問に使用する車の購入費・リース代・保険料など
ガソリン代 訪問件数や移動距離が増えるほど大きくなりやすい費用
スマートフォン代 スタッフ間の連絡や利用者・関係機関との連絡に必要
インターネット代 電子カルテや請求業務などに必要な通信費
電子カルテ代 記録・請求・情報管理などに使用するシステム費用
事務所家賃 事務所を借りる場合に毎月発生する固定費
税理士・社労士費用 税務・給与計算・社会保険手続きなどを依頼する場合の費用
その他の消耗品費 コピー用紙、インク、文房具、衛生用品など

開業直後には、「仕事はしている。売上も発生している。でもまだ入金されていない」という期間が発生します。

ここを乗り切るためのお金が「運転資金」です。


自己資金は開業費用だけを考えてはいけない

訪問看護ステーションを開業するとき、

「車が40万円」
「パソコンが10万円」
「プリンターが数万円」

といった初期費用だけを合計してしまうと危険だと思います。

たとえば初期費用として100万円必要だから、
「自己資金100万円あれば開業できる」
とは単純には言えません。

開業した翌月にも給与を払います。
さらにその翌月にも給与を払います。
その間にも社会保険料や通信費などが発生します。

開業前に自治体の補助金・助成金も確認しておく

訪問看護ステーションの開業を考えるなら、自己資金だけでなく、 自治体で利用できる補助金・助成金がないか事前に調べておくことも大切です。

契約・購入・申請を始める前に、自治体の最新の制度と申請条件を確認しておくのがおすすめです。


指定を受ける前からスタッフ3か月分の給与が必要なのか?

訪問看護ステーションは、誰か一人が「今日から開業します」と言って始められるわけではありません。

指定訪問看護ステーションには人員基準があり、看護職員について常勤換算2.5人以上が必要です。

さらに、そのうち少なくとも1人は常勤である必要があります。

そこで疑問になるのが、「指定を取る前からスタッフを雇って、ずっと給与を払わないといけないの?」ということです。

これについては、指定申請に必要な人員について、指定開始予定日から働ける勤務体制や雇用関係を整え、申請先が求める雇用契約書・勤務形態一覧表などの書類を準備していくことになります。

「指定申請のために看護師を確保する」ことと、「何か月も前から実際に勤務してもらい、給与を払い続ける」ことは同じ意味ではありません。

たとえば、「○月1日から勤務開始」という形で事前に雇用契約を結び、指定開始日から人員基準を満たせるよう準備する方法が考えられます。

ここは非常に重要で、指定申請時に必要となる雇用関係の証明書類や勤務開始日の扱いなどは、申請先によって必ず確認した方がいいと思います。


一番大きいのはやはり人件費

訪問看護ステーション経営で最も大きな固定費になりやすいのは人件費です。

人件費が毎月どのくらいになるのか、具体的な金額を入れて考えてみます。

人件費 想定 月額
代表兼管理者 役員報酬 20万円
常勤看護師 常勤1名 30万円
非常勤看護師 週20時間程度を想定 18万円
社会保険料など 健康保険・厚生年金などの会社負担分(概算) 約10万円
人件費合計 代表兼管理者+常勤+非常勤+会社負担分 約78万円/月
このモデルケースで考えると
人件費だけでも、1か月で約78万円、 2か月で約156万円、 3か月で約234万円になります。

さらに事務所家賃、車両費、ガソリン代、通信費、電子カルテ代などが加わります。 開業時には「最初にいくらかかるか」だけではなく、 入金が安定するまで毎月いくら出ていくのかを計算しておくことが重要です。

※上記は開業時の資金をイメージするためのモデルケースです。 実際の給与・役員報酬・社会保険料等は、雇用条件、加入する健康保険、年齢、標準報酬月額などによって異なります。


開業時はできるだけ固定費を抑えたい

私自身、訪問看護ステーションの開業では、できるだけ固定費を抑えてスタートしたいと考えています。

自己資金が限られている以上、最初から大きな設備投資をする余裕はありません。

まずは人員基準や必要な設備を満たし、利用者さんの増加に合わせて少しずつ事業を拡大していく予定です。

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