私は小学校から高校まで、いじめを経験しました。
嫌なことを言われても、言い返すことができない。本当は悔しいのに、何も言えず、ただ我慢するしかありませんでした。
当時の私は、頭の中でいつも次のように考えていました。
・ やり返したら、もっといじめられる
・ 自分が悪いのかもしれない
・ 我慢した方がいい
今振り返ると、これは 思考のクセ だったのかもしれません。
訪問看護の仕事をしていると、利用者さんが同じような言葉を口にすることがあります。
「自分は迷惑ばかりかけている」
「もう何をやっても無理だ」
と話す利用者さんもいます。
私たちは何か出来事があると、瞬間的にさまざまな考えが浮かびます。
認知行動療法では、このように自然と浮かんでくる考えを「自動思考」と呼びます。
この記事では、自動思考の仕組みと、思考のクセを整える方法をわかりやすく紹介します。
もし「まだ起きていない未来」を考えて不安になることが多い場合は、「未来が不安で考えすぎてしまう人へ|認知行動療法でわかる未来不安の対処法」の記事も参考になるかもしれません。
考え方によって気持ちは変わる
同じ出来事が起きても、その出来事をどう受け止めるかによって、気持ちは変わります。
たとえば、上司から仕事のことで注意されたとします。
「自分は嫌われている。どうせダメなんだ」
そう考えると、落ち込んだり、不安になったりするかもしれません。
一方で、「仕事について注意されただけで、嫌われているとは限らない」「注意されたところを直せばいい」と考えることもできます。
大切なのは、無理に前向きに考えることではありません。
一つの考え方だけで決めつけず、別の見方ができないか考えてみることです。
認知行動療法では、このように自分の考え方と気持ちのつながりに目を向けていきます。
自動思考に気づく3つのステップ
自動思考は、無意識に浮かんでくるため、自分ではなかなか気づけません。
そこで、嫌なことがあったときは、次の3つに分けて考えてみます。
① 何があったのか
まずは、起きた出来事だけを振り返ります。
たとえば、「仕事で上司から注意された」
ここでは、「嫌われている」などの考えは入れず、実際に起きたことだけを整理します。
② そのとき何を考え、どう感じたか
次に、その瞬間に頭に浮かんだことを振り返ります。
「自分は嫌われているのかもしれない」
「どうせ自分はダメなんだ」
そして、「悲しかった」「不安になった」「落ち込んだ」など、そのときの気持ちも一緒に確認します。
ここで初めて、「自分はこんなふうに考えていたんだ」と自動思考に気づくことができます。
③ 別の見方はできないか考える
最後に、その考えだけが事実なのか、一度立ち止まってみます。
「注意されたからといって、嫌われているとは限らない」
「今回は仕事について注意されただけかもしれない」
「直せるところは、次から気をつければいい」
このように、少し違った見方ができないか考えてみます。
大切なのは、無理に前向きになることではありません。
一つの考えだけで決めつけず、別の見方も探してみることです。
私自身も「自動思考」に影響されてきた
認知行動療法について学んだとき、私は自分の過去を思い出しました。
子どもの頃、いじめられていた私は、「やり返したら、もっといじめられる」「我慢した方がいい」と考えていました。
当時は、自分を守るためにそう考えていたのかもしれません。
しかし大人になってからも、
・自分の意見を言えない
・嫌われないように我慢する
そんな場面がありました。
今振り返ると、子どもの頃に身についた「思考のクセ」が、大人になっても残っていたのだと思います。
認知行動療法を知って、私が印象に残ったのは、「頭に浮かんだ考えが、すべて事実とは限らない」ということです。
そう気づくだけでも、自分の考えを少し違った角度から見られるようになるのではないかと思っています。
考え方は、少しずつ変えていける
私は長い間、「我慢した方がいい」「自分が悪いのかもしれない」と考えることがありました。
それが自分の性格だと思っていた時期もあります。
でも、認知行動療法について学び、自分の中にはこれまでの経験から身についた「思考のクセ」があることに気づきました。
考え方は、長い時間をかけて身についたものなので、すぐに変わるわけではありません。
それでも、「これは本当に事実なのかな」と一度立ち止まれるだけで、以前とは少し違います。
過去の経験を変えることはできません。でも、これから起きる出来事をどう受け止めるかは、少しずつ変えていくことができます。
まずは、自分がどんなふうに考えるクセを持っているのか。そこに気づくことが、心を整える小さな一歩になるのだと思います。


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