精神科訪問看護基本療養費ⅠとⅢの違い|30分以上・30分未満の料金をわかりやすく解説

精神科訪問看護基本療養費ⅠとⅢについて解説する訪問看護師のイメージ 40代看護師の働き方・お金
精神科訪問看護基本療養費ⅠとⅢの違いや、30分以上・30分未満の算定についてわかりやすく解説します。

精神科訪問看護で働いていると、

「この利用者さんは基本療養費Ⅰ」

「このグループホームは基本療養費Ⅲ」

という言葉をよく使います。

私自身、精神科訪問看護の現場で働いていますが、最初の頃は「ⅠとⅢは何が違うのか」「30分以上と30分未満でいくら違うのか」など、報酬の仕組みが少し分かりにくく感じていました。

そこで今回は、精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)と(Ⅲ)の違いについて、現場で働く看護師の目線からできるだけシンプルに整理してみます。

※この記事では、保健師・看護師・作業療法士が訪問した場合を中心に説明しています。2026年度診療報酬改定後の内容をもとにしています。


精神科訪問看護基本療養費とは、簡単にいえば、精神科訪問看護を行ったときに訪問看護ステーションが算定する基本的な療養費です。

精神科の主治医から交付された精神科訪問看護指示書などに基づき、一定の要件を満たした訪問看護ステーションから訪問することで算定します。

精神科訪問看護基本療養費にはいくつか種類がありますが、現場でよく目にするのが「Ⅰ」と「Ⅲ」です。

まず大きな違いを簡単に説明すると、

精神科訪問看護基本療養費Ⅰ
→ 同一建物居住者に該当しない利用者への訪問(自宅に暮らしている利用者のこと)

精神科訪問看護基本療養費Ⅲ
→ 同一建物居住者への訪問(グループホームなど)

という違いがあります。

厚生労働省では「同一建物居住者」について、同じ建物または同じ敷地内の建物に住む他の利用者に対して、その訪問看護ステーションが同じ日に訪問看護を行う場合の利用者としています。

そのため、現場では一人暮らしの利用者さんへの訪問で「Ⅰ」、グループホームなどで同じ日に複数の利用者さんを訪問すると「Ⅲ」になるケースをよく経験します。

ただし、

「一人暮らしだから必ずⅠ」「グループホームだから必ずⅢ」

と、住んでいる場所だけで決まるわけではありません。

あくまでも「同一建物居住者に該当するか」がポイントになります。

では、実際にいくら算定されるのでしょうか。

2026年度の精神科訪問看護基本療養費は、保健師・看護師・作業療法士の場合、次のようになっています。

区分 30分以上 30分未満
Ⅰ:週3日目まで 5,550円 4,250円
Ⅰ:週4日目以降 6,550円 5,100円
Ⅲ:同一日に2人・週3日目まで 5,550円 4,250円
Ⅲ:同一日に2人・週4日目以降 6,550円 5,100円
Ⅲ:同一日に3〜9人・週3日目まで 2,780円 2,130円
Ⅲ:同一日に3〜9人・週4日目以降 3,280円 2,550円

※保健師・看護師・作業療法士が訪問した場合の精神科訪問看護基本療養費。実際の算定時は最新の厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

ここで注目したいのが、基本療養費Ⅲだからといって、必ずⅠより金額が低くなるわけではないということです。

たとえば週3日目までの30分以上の訪問を比較すると、

基本療養費Ⅰは5,550円。

基本療養費Ⅲでも、同一日に訪問する同一建物居住者が2人の場合は5,550円です。

つまり、この場合は同じ金額です。

一方、同一日に3〜9人になると2,780円になります。

5,550円から2,780円なので、1人あたりの基本療養費はかなり下がります。

ただし、ここで「3人訪問すると損なの?」と思うかもしれません。

単純にそうとも言えません。

たとえば同じグループホームに3人の利用者さんがいて、全員に30分以上訪問した場合、

2,780円 × 3人 = 8,340円

となります。

1人の利用者さんの自宅まで車で移動して5,550円を算定するのと、同じ建物内で3人に訪問して合計8,340円を算定するのでは、移動時間や人件費なども含めて考える必要があります。

訪問看護ステーションを運営する側から見ると、「1件いくらか」だけではなく、移動時間を含めて1時間あたりどのくらいの売上になるのかという視点も重要になってくると思います。

そして、もう一つ知っておきたいのが「30分未満」の訪問です。

週3日目までであれば、

30分以上:5,550円
30分未満:4,250円

となり、1回の訪問で1,300円の差があります。

ただし、「今日は利用者さんと話すことが少なかったから20分で終わりにして4,250円を算定しよう」という単純な考え方ではありません。

精神科訪問看護では、利用者さんの状態や治療上の必要性を踏まえ、精神科訪問看護指示書や訪問看護計画に基づいて適切に訪問することが基本になります。

そのため、30分未満の訪問についても「短時間で終わらせればいい」というものではなく、なぜその利用者さんに短時間の訪問が必要なのかという視点が大切です。

精神科訪問看護では、服薬状況の確認、精神状態の観察、生活状況の確認、相談支援など、利用者さんによって必要な支援は大きく異なります。

実際に現場で働いていると、30分以上じっくり話をする必要がある方もいれば、長時間の関わりが負担になってしまう方もいます。

制度上の金額だけを見るのではなく、その人に必要な訪問看護を考えることが大前提だと思います。

また、今回紹介した5,550円や4,250円という金額が、そのまま利用者さんの自己負担額になるわけではありません。

これは訪問看護ステーションが算定する基本療養費の金額です。

実際の訪問看護では、このほかにも訪問看護管理療養費や、条件を満たした場合の各種加算などが関係します。

そのため、

「30分訪問したらステーションには実際いくら入るのか?」

を考えるには、基本療養費だけではなく管理療養費なども含めて考える必要があります。

私自身、精神科訪問看護の現場で働いてきましたが、こうして報酬の仕組みを一つずつ調べてみると、普段何気なく行っている訪問が「どのような仕組みで報酬になっているのか」が見えてきます。

特に訪問看護ステーションの運営や開設を考える場合には、

「1件訪問するといくらになるのか」

「30分以上と30分未満でどのくらい違うのか」

「個人宅と同一建物ではどう変わるのか」

「移動時間を考えると、1日何件くらい訪問する必要があるのか」

といった数字を理解することも大切です。

今回は、精神科訪問看護基本療養費ⅠとⅢについて紹介しました。

まずは、

Ⅰ=同一建物居住者以外への訪問

Ⅲ=同一建物居住者への訪問

そして、

30分以上・30分未満、訪問人数などによって金額が変わる

という基本を押さえておくと、精神科訪問看護の報酬体系がかなり理解しやすくなると思います。

※診療報酬・訪問看護療養費は改定されるため、実際に算定する際は最新の厚生労働省の告示・通知等をご確認ください。

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